第3章 【命からがら】
「そんな顔をするな。さっきも言った通り、君たちの無事を確認できただけでも大収穫なんだ」
「でも騎士団の皆は散り散りになってしまったんでしょう?アジトもないし、どうやって連絡を取り合うの?“計画性のない戦いは避けるべき”なんでしょう?」
「そこなんだ、痛いところは。ダンブルドアが生きていた頃と今では状況が……。まあ、今日くらいはここに泊まると良い。食料も少しならあるだろう――クリーチャー!!」
シリウスが大きな声でクリーチャーの名を呼ぶと、パッと音を立ててクリーチャーが姿を現した。
シリウスが料理を作れと命令すると、クリーチャーはブツブツ悪態をつきながら豚鼻を地面すれすれまで下げ、厨房に向かった。
「ねえシリウス、クリーチャーにもっと優しくできないの?」
「君は自分のことを『生きる価値のないゴミ屑』と呼ばれても仲良くしたいのかい?」
挨拶の様にシリウスがさらりと返すと、ハーマイオニーは何か言いたげに口をもごもごしていたが、結局何も言わなかった。
そうこうしている内に、話しはダンブルドアが残した遺贈品に移っていた。
ロンには火消ライター、ハーマイオニーには児童書、クリスには銀磨きセットで、ハリーには1年生の時に掴んだスニッチだ。
これだけ並べると訳が分からないが、クリスはあることに気づいていた。
「ダンブルドアが遺贈品を通じて、私たちに何かメッセージを送っていることは確かだ」
「どうしてそう言い切れるのさ?」
「私の腕輪はゴブリン製だ。磨く必要なんてないのに、わざわざ遺贈品として銀磨きセットなんて贈らないだろう?」
その言葉に「確かに……」とか「言われてみれば」などと声が上がった。