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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第3章 【命からがら】


 それじゃあロンの火消ライターはどんな物なのか。試しにライターをカチッと押してみると、辺りのランプの灯が一瞬にしてライターの中へ吸い込まれていった。
 そしてまたカチッと押すと、吸い込まれた灯りがもとのランプに戻っていった。

 興味深くないこともないが、果たしてこれが何を意味しているのかが分からない。
 さらに問題なのが、ハーマイオニーに至っては吟遊詩人ビードルの名前さえ知らないという事実だった。

「泣いていないのには気づいてたけど、まさか名前も知らなかっただなんて……」
「仕方ないでしょ!自分が魔女だと知った時はもう11歳だったのよ!?11歳が絵本なんて興味持つと思うの!?」
「分かった、分かった。さて、最後はハリーだけど……」

 ハリーは箱に収められていたスニッチを手にしたが、特に反応はなかった。放してみても、ジグザグに飛んでみせるだけだ。

「これはハリーが初めて試合でつかんだスニッチなんだろう?」
「うん。でもそれだけで、何でもないただのスニッチだよ」

 何をするにしても、情報が少なさすぎる。これ以上考えていても仕方ないので、とにかく今日はもう休もうとシリウスが提案した。

「以前と同じように好きな部屋で休んでくれ……と、言いたいところだが、安全性を考えて今夜は応接間でかたまって寝ることにしよう。見張りは私がやるから、皆は体を休めてくれ」
「シリウスだけに見張りを任せられない、交代制にしようよ」
「残念だがこれは屋敷の主の命令だ、従ってもらおう」

 そう言いながら、シリウスは嬉しそうにハリーの頭をクシャクシャッと乱暴に撫でた。その姿はまるで親子というより、親友同士という感じだった。
 きっとハリーのお父さんとシリウスは、学生の頃こんな風にお互いを支えあってきたのかもしれない。
 そんな光景を見ながら、クリスは自分でも気づかないうちに微笑んでいた。
 
 それから皆で寝るために邪魔な家具をどけて人数分の寝袋を出すと、疲れていたのかどこからともなく眠気が襲ってきた。
 よく考えれば今日1日で何度いらない事件に遭遇しただろう。それらの蓄積に、クリスは瞬く間に夢の世界へと旅立った――。
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