第3章 【命からがら】
「これって……偶然なのかな?」
「何が?」
「こいつら3人が現れたことだよ!こんなチンケな店に僕たちがいるってなんで分かったんだろう?」
「ハリーの『保護の魔法』は17歳になったと同時に解けたんだよな?」
「うん、そのはずだけど……」
言いたいこと、確認したいことはそれ以外にも沢山あった。しかし早くこの場を離れなければならない。
『隠れ穴』は駄目だし、かと言って他に行くあてもない。のろのろ考えている余裕もない中で焦ったのか、ハリーがとんでもない提案をした。
「グリモールド・プレイスはどうかな!?」
このハリーのセリフを聞いた時、クリスとロンは揃って「はあ?」と素っ頓狂な声をあげた。
秘密の守り人の1人でもあるスネイプが出入りできる場所に、どうしてわざわざこちらから出向かなければならないのか。
だが、思ったよりハリーの意志は固かった。
「スネイプが出てきたって関係ない、寧ろ僕にとっては好都合だよ。早くヤツとやりあえる」
「一応パパが、スネイプ除けの魔法をかけてあるって言ってはいたけど……」
「……どちらにしても、行く当てがないわ。私はハリーの提案に乗るわ」
ただし『油断大敵』――だ。
ムーディ先生の口癖を思い出しながら、4人は片手を重ね合わせグリモールドプレイスへ『姿くらまし』をした。
もちろん追手の危険性も考え、玄関となる石段の1番上に『姿現し』をして、それから耳をそばだて、周囲の気配を確認しながら大きな玄関扉を開いた。
「……思ってたより荒らされていないな」
「そうなの?」
「ああ、私の屋敷はもっと酷かったぞ」
もしかしたらグリモールド・プレイスには、若干だがまだ「秘密の守り人」としての効果が残っているのかもしれない。
だが5年生の夏休みの時、あれだけ掃除したのに、またカビ臭く埃っぽい、陰気な屋敷に戻っていた。
――まさにその時、光の射さない暗い廊下の向こう側から、煙のような、またはゴーストのようなモノが現れた。
それは次第に形を成していき、最終的にダンブルドアの姿となってクリス達に襲い掛かってきた。
「プロテゴ、護れ!!」
とっさにハリーが呪文を唱えると、ダンブルドアの偽物は霧のように消えていった。それを見て、4人はホッと息を吐いた。