第3章 【命からがら】
ハリーはそう宣言したが、ハッキリ言ってこれが正しい行動なのかどうなのかは分からなかった。ただクリスとしては、自分がいる場所に平穏が訪れるのはもっとずっと先の事だろうと予見していた。
だから先に進む。先に進めば進むほど、この悪夢のような時代は終わるのだから。
そう決意した時、店員がコーヒーを持ってきたと同時にヘンテコな恰好をした3人の男たちが入ってきた。
ガムをクチャクチャ噛み、いかにもマグルですと言いた気だが、アロハシャツに真っ赤なロングスカートといういで立ちではとても普通とは思えない。
(……ハリー?)
(うん、分かってる)
3人組の男達は、ロンと背中合わせになるようボックス席に座った。
出来れば戦闘は避けたいが、それは無理だろう。ロンの真後ろに座っている男は、さっきからこちらをチラチラ盗み見ていて、明らかに好戦的な雰囲気がだだ洩れである。
そこで4人は長年の経験から、殆んど合図なしに一気にスルッと滑るようにテーブルの下に身を隠した。
「吹き飛べ!ヴェンタス!!」
テーブルを横倒しにしてバリケードにし、まず最初にハーマイオニーが術をかけた。すると不審な男の1人が壁まで吹き飛ばされた。
それをきっかけに騒然となった店内で、さっと透明マントを脱ぐと、ハリーとクリスも戦いに参加した。
行きかう閃光に戸惑うウエイトレスや店主が悲鳴を上げる中、ロンがとっさにポケットから火消ライターを取り出し、店内の明かりを全て吸い取った。
「エクスペリアームズ!!」
暗闇の中、ハリーの十八番がさく裂した。その後、ハーマイオニーが魔法でその3人をロープで固定した。それを確認すると、ロンがまた火消ライターから吸い取った明かりを戻した。
「こいつら、いったい何で……」
「その前にこっちが先よ!」
ハーマイオニーは店の奥で震えているマグルの店員たちに魔法をかけ、ここでの戦闘の記憶を消し去る魔法を唱えた。
ついでにロープで縛られている3人組の男たちにも同様の魔法をかけた。
とろんとした目で天井を見つめている様子から、術が上手くいったことが分かった。と、同時に安心感と多くの疑問が頭を締めた。