第3章 【命からがら】
「何それ、どうなってるの?って言うか、なんで準備してあるの?」
「今日は結婚式であると同時に、ハリーの誕生日よ!狙うなら恰好の日じゃない!!だから前々から準備していたのよ!」
そう言うと、脱いだパーティローブをまとめて小さなビーズバッグに入れた。と、同時に、本と思われる荷物がカバンの中でドサドサッと崩れる音がした。
きっと魔法でバッグの中身を何倍も大きくして、色々詰め込んできたのだろう。それにしても、詰め込みすぎではないか?と思わなくもない。
どちらにしても、頭の回るハーマイオニーが居て助かった。
4人は物陰に隠れながらごそごそと普段着に着替えた。そして最後に何度も窮地を救ってくれた『透明マント』を取り出した。
しかし身長的に4人が隠れるのは無理だ。ここは優先順位としてハリーとクリスが隠れることになった。
「ここら辺に、たしかカフェがあるわ。そこで一息つきましょう」
酔っ払い達のからかいを無視しつつ、4人は24時間営業の薄汚れたカフェに入った。
店員に不思議がられないように片側のソファー席に透明マントを羽織ったハリー、クリスが座り、その横にハーマイオニーがぎゅうぎゅう詰めになりながら席に着いた。
「何にします?」
「えーっと……コーヒーを2つ」
愛想の足りない店員が去っていったのを確認してから、4人は声を潜めながら話しを始めた。
キングズリーのパトローナスは、スクリムジョール大臣が殺されたと言っていた。道は違えど、打倒ヴォルデモートを目指していた大臣が亡くなったのは酷い痛手だ。
それにしても、あの場にいた皆はどうなったのだろうか。ウィーズリー家のみんなや、シリウス。それにルーピン先生やトンクスも。
この暗い日々の中で、数少ない幸福な一日になるはずだったのに……。
「これからどうする?一旦『隠れ穴』に戻――」
「――ることは出来ないわ。あれだけ厳重に結界を張ったのに破られたのよ!?こうなったら戻るよりも、先に進みましょう」
「そうだね……。よし、早く『分霊箱』を見つけて、ヴォルデモートをやっつけよう!」