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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第1章 Last summer vacation~Harry~


 そんな悪夢のような夜から数日が経過した。
 その間、どんな慰めの言葉をかけてもらっても、どんなに素晴らしい結婚式を前にしても、ある言葉がハリーの心を蝕み続けていた。

『 もしも、自分に関わらなければ―― 』

 心の奥底から浮かび上がってくるその言葉と共に、激しい罪悪感に襲われる。自分に対する怒りで顔を歪めつつ、ハリーは額の痣を殴るように強く拳を圧し付けた。
 その時だった。不意に背後から誰かが近づいてくる気配がして、ハリーは素早く振り返った。

「なんだハリー、こんなところにいたのか」
「……クリス?」

 振り返ると、そこにいたのはクリスだった。彼女の白い肌が月明かりに照らされ、さらに白く美しく見える。
 夜の庭に立っているだけで絵になるなんて、神様はずいぶんと依怙贔屓をしたなと思う。
 だが当然クリスはそんなことは意に介さず、宴会の賑やかな歓声を背後にハリーに近づいてきた。

「どうして、パーティの途中じゃないの?」
「ははッ!私がルーピン先生の結婚式前夜に、楽しく酒を呑むとでも?」

 自嘲的に笑うクリスに、ハリーは地雷を踏んだと慌てて撤回した。

 今までずっと憧れ続けていた人が、明日別の女性と結婚するのだ。しかも今夜ばかりはクリスのご機嫌取りであるシリウスも相当浮かれて呑み騒いでいるから、彼女としては余計に面白くないだろう。

 クリスは小さく溜め息を吐くと、当然のようにハリーの隣に並び静かに夜空を眺めた。
 それが妙に様になって見えるのは、彼女特有の人を惑わせる容姿の所為だろうか。それとも単純に、天文学が好きだと知っているからだろうか。
 どちらにせよ、クリスにつられるようにハリーも黙って夜空を見上げた。

「……綺麗だな」
「……うん」
「なあハリー、知っているか?人は死んだら星になるんだそうだ」

 ふいにクリスが呟いた言葉に、ハリーの心臓がドキッと大きく揺れた。なぜ自分がパーティを抜けてきたのか、悟られたと思ったのだ。
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