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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第1章 Last summer vacation~Harry~


 君と出会った時のことは忘れもしない。
 それは少し緊張しながら期待に胸を膨らませていた9月1日――

「え……妖、精?」

 ホームからあふれんばかりの人込みに追いやられ、仕方なく後方のコンパートメントの扉を開けたその時、僕はその光景に思わず息をのんだ。
車窓から差す陽かりに照らされて眠る君の横顔は、まるで絵本の挿絵のようで……。
 その光景を見たとき、僕の中で『おとぎ話し』の幕が上がったんだ。

【Last summer vacation~Harry~】


 煌めく星々が浮かぶ夏の夜空に、人々の笑い声が幾重にも連なる。そんな賑やかで明るい雰囲気から離れたくて、ハリーは誰にも気づかれぬようそっと庭に出た。
 明日は7月31日。自分の誕生日であり、2組の合同結婚式が行われる日でもある。
 この日の為に何日も前から式の準備をして、集まった両家の親族たちは前祝いと称し派手に杯を交わしていた。

 愛する者たちが結婚し、結ばれ、家族になる。ダンブルドアが聞いたらきっととても喜んだだろう。
 だがそのダンブルドアは既に亡く、さらについ先日も、自分の所為で人が死んだ。――ハリーにはそれが耐えられなかった。

 ダーズリー家からハリーをこの「隠れ穴」に護送するという任務の途中で、あのマッド・アイ・ムーディが『死喰い人』の攻撃に当たって死んだ“らしい”。
 “らしい”と断言しないのは、実際ハリーがその現場を目にしたわけではないからだ。
 それに騎士団からの話しでは、まだ遺体の回収も済んでいないという。
 それならばもしや――と、ハリーは一縷の望みにすがらずにはいられなかった。

 またジョージも、命は助かったが闇の魔法で片耳を失う大怪我を負った。本人は笑いながらジョークを飛ばしていたが、大量に出血した様子を見て、ハリーはとても笑える状態ではなかった。

 そして、そして同じく長年相棒を務めてくれたヘドウィグも亡くなった。
 とても賢く主人に忠実なあまり、ハリーの傍を離れなかった所為でヴォルデモートに狙われ、ハリーをかばう様に『死の呪い』に当たったのだ。
 彼女の白く美しい躰が 、暗い夜の街に吸い込まれるように消えていく……。
 ハリーは燃え盛るような悔しさから、その光景を決して忘れまいと、歯を食いしばって涙をこらえ、必死に網膜に焼き付けた。
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