第21章 【ファム・ファタール】
「待ってクリス。マルフォイだけなら、私でも援護出来ると思うわ」
「何でも良い、とにかく一旦二手に分かれるぞ!!」
果たして策は上手くいくのか。やってみなければ分からないというのが正直なところだが、ドラコの言う通り上手くいけば、突破口が開かれる。
クリスはハーマイオニーとドラコと視線を合わせると、お互い無言で頷いた。
「それじゃあ行くわよ、マルフォイ」
「ああ、タイミングを間違えるなよ」
「3、2、1――今だ!」
その掛け声に合わせて、ドラコは部屋の中心部からパンジーのいる扉のほうへ走った。するとそれに導かれるがごとく、キメラがドラコを追う。
そのタイミングを待っていたハーマイオニーが盾の魔法を使ってドラコを援護をすると、ドラコも体勢を立て直し、何とか無事二手に分かれることができた。
その間も、クリスはキメラに攻撃を繰り返していたが、決め手となるダメージは与えられていない。
じりじりとした消耗戦では、こちらが不利になるのは目に見えている。
炎が渦巻く部屋の中、クリスは著しく体力を消耗していき、やがて立っていられなくなり、ガクッと片膝をついた。
「ロン、悪いが……私の体を支えててくれないか?もう、体力が限界で……」
「君ってなんでそういう大切なことをギリギリまで言わないんだよ、まったく!!」
「僕らもクリスを援護するぞグレンジャー!!」
「分かってるわ!アグアメンティ・マキシマッ!!」
クリスはロンに支えられながらも、ウンディーネに命令を出していた。だが、中々キメラに致命傷を与えているようには見えない。
こうなったら覚悟を決めてやる!クリスは水の盾を張りつつ、最後の力を振り絞った。
「精霊よ!我が力の限りを尽くし、悪しき者を打ち砕け!」
するとウィンディーネの姿が、水で出来た巨大なドラゴンに変わり、キメラに向かって体当たりした。
元々精霊は術者の深層心理に基づいた姿で現れる。だが、元の姿からこんな風に全く違う姿になるなんて思いもしなかった。
この戦いを通して、確実に術者として成長している……クリスは召喚の杖をさらにグッと握りしめた。