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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第21章 【ファム・ファタール】


「行け!ウンディーネ、奴を滅ぼせ!!」

 するとウィンディーネは、大きく口を開けると、そのままキメラを噛み殺した。
 これで終わりだ。ドラゴンが姿を消すのと同時に、渦巻く炎に包まれていた部屋に大量の水が降り注ぎ、部屋に残ったのは大量の消し炭と水たまりだけだった。
 クリスはふらつきながらも、パンジーに近づいて行った。

「何よ!こ、来ないで!来たら死んでやるんだから!!」
「…………」

 クリスは床に座り込むパンジーに合わせて膝をつくと、その横っ面に素早くビンタをかました。

「何が貴方を殺して私も死ぬだ?どこの三文小説で拾ったのか知らないが、チンケにもほどがあるぞ!」
「……なによ、何よ、何よ!?どうせ貴女には私の気持ちなんて分からないわよ!!寝言で何度貴女の名前を聞いたと思ってるのよ!!」
「そんなこと知るか。だけどこれだけは言えるぞ」

 クリスはパンジーの胸ぐらグッとつかむと、胸を反り返るように膝立ちにさせた。

「私の知っているパンジー・パーキンソンは、そんなちゃちな弱音を吐く奴じゃなかった!いつだって真っ向から立ち向かってくる、そんな底意地は悪いが根性だけはある奴だったぞ!!」
「……そうね、貴女の言う通りだわ、だから――」

 一瞬の隙を突き、今度はパンジーがクリスの横っ面を引っ叩いた。

「これで50―50ね。次は必ず貴女に勝って見せるわ」
「冗談、60―40で私の勝ちだろう?今度はキメラじゃなくて、もっと面白いものを用意しておけよ」
「そんなのお断りよ、貴女の思い通りになんて絶対になってやらないわ」

 そう言って扉に向かっていったパンジーだったが、出入り口付近でピタリと足を止め、背中を向けたままドラコに話しかけた。

「貴方は私たち闇の陣営を裏切った。次に会うときは殺し合いよ」
「……分かっているさ。でも――」
「でもも何も無いわ。さようなら、ドラコ・マルフォイ」

 それ以上の言葉もなく、パンジー・パーキンソンは静かに部屋の扉を開けて出ていった。それを見届けた後、力を使いすぎたクリスは、その場で膝からガクンと崩れ落ちた。

「クリス!?」
「悪いが……少し寝かせてくれ。体力を使いすぎた……」

 それだけ言うと、クリスは遊び疲れた子供のようにすやすやと眠りについたのだった――。
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