第21章 【ファム・ファタール】
ウィンディーネは金の三叉の鉾を掲げ、水の盾を作って4人を攻撃から守った。すると今度は鉾をキッと構え、水の刃を幾つもキメラに打ち込んだ。
だが、威力が低いのか、それともキメラの防御力が高いのか、まるでダメージを与えたようには見えず、クリスは苦々し気に舌打ちをした。
「チッ、これじゃあ埒が明かない。こうなったら手加減抜きでやるぞ、パンジー!!」
再び金の鉾を掲げると、パンジーの体はキメラと同じく壁際まで吹き飛ばされた。しかし、未だ決着を決めるには及ばず、次なる手を打とうとした。
そこに、思いがけず援護が入った。
「エクスペリアームズ!」
クリスの背中越しに、ハーマイオニーが武装解除の呪文を唱えた。するとパンジーの杖がポーンと飛んできて、それをロンが上手くキャッチした。これで勝敗は決した――はずだった。
「どうするパンジー、まだやるのか?」
「……フフッ、ウフフフ――」
「……パンジー?」
「アハハ、アハハハハハ!!これであなた達は終わりよ、何せあのキメラを制御する方法を失ったんですからね!!」
「制御する……方法!?」
「そうよ、私を倒してキメラの制御が解けたらもうお仕舞い。暴走したキメラの炎の中で成すすべなく、私と貴方で永遠に続く愛の炎に身を焦がしながら朽ち果てるの。どう?なんて狂おしくて素敵な最期だと思わない?」
そう言った傍から、先ほどのキメラが炎を吐きながら襲い掛かって来た。
ウィンディーネがとっさに水の盾を張って守ってくれたのは良いが、制御を失ったキメラなんてどう倒せばいいのか見当もつかない。
クリスは何度となく巨大な水柱を起こしキメラに向かって発射したが、焼け石に水と言うべきか、イマイチ決定打に欠けていた。
そんな中、本当に死ぬ気なのか、パンジーはまるでダンスをするように笑いながらくるくると回っている。
そんな彼女を守りながら、終始攻撃を仕掛けてくるキメラ相手にクリスは急激にと体力と魔力が疲弊していっていた。
そんな状態の中、ドラコがクリスにこう持ちかけた。
「クリス、どうにか二手に分かれることは出来なのか?そうすれば援護と攻撃に分かれて君の負担が減るはずだ!」
「無理だ!あのキメラが襲ってくる中で、水の盾を2つに分けるわけにはいかない!!」