• テキストサイズ

ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第20章 【ロンの閃きとキャビネット】


 折角仲良くなれる機会が訪れたと思ったのに、ドラコの捻くれた性格の所為でまた台無しになった。
 だが言葉使いはアレでも、行動は少しずつだが軟化しつつある。そうでなければ、ドラコがロンやハーマイオニーに保護魔法なんて掛けるはずないし、“あのハリー”からパトローナスを呼び出す方法を教えてもらおうなんて、死んでも拒否したはずだ。

 それはさて置き、追手が居ないことを確認しながらノクターン横丁までやって来ると、4人はどうやってボージン・アンド・バークスに入り込むか案を出し合った。
 短気なクリスは「4対1だ、そのまま突っこめば良い」と言ったが、今のご時世、侵入者防止の結界を使っていない店などどこにも無く、それでは只いたずらに騒ぎを起こすだけだと全員から却下された。
 ならば――と、クリスはまた奇抜な発想を思いついた。

「私たちが店に入れないなら、キャビネットを店から出せば良い」
「はぁ!?」
「クリス、貴女自分が何を言ってるのか分かってるの!?」
「分かってるさ。1人が魔法で音を立てない様に慎重に扉の開閉をして、もう1人が耳ふさぎの魔法をかける。そして残りの2人がキャビネットを浮遊させて運ぶんだ」
「運ぶって、どこに!?」
「何処でも良いさ、なんなら『漏れ鍋』のゴミ捨て場とかで良いんじゃないか?」

 この奇天烈な発想に、3人は「また始まったか」と頭を抱えた。だが今は他の手を考えている余裕などないし、一か八か、この素っ頓狂な作戦にかけてみることにした。

 こうしてドラコが扉の開閉役を務め、ロンが耳ふさぎの魔法を、そして残ったクリスとハーマイオニーでキャビネットを浮遊させ移動することになった。
 ハーマイオニーは緊張しているのか杖の先端をわずかに震わせながら「これじゃあまるでクレーンゲームね」と眉間を抑えながらボソッと毒づいた。

「じゃあ行くよ……アロホモラ」
「……マフリアート」
「モビリアーブス・キャビネット、モビリアーブス・キャビネット」

 ノクターン横丁は基本的に夜に店を開けるところが多く、ボージン・アンド・バークスも例外ではなかった。
 他に通行人はおろか、客すら居ないのを良いことに、4人は四苦八苦しつつも、何とかキャビネットを店から持ち出すことに成功した。
/ 175ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp