第20章 【ロンの閃きとキャビネット】
シリウスの言葉に、クリスは少しほっとした。だがこれではヴォルデモートに筒抜けどころか、今日にでもホグワーツに攻めて来る可能性が十分ある。
だと言うのに、こちらの準備はまだ全部終わっていない。とにかくハリーの杖が出来上がらなければ、動きたくても動けないのが現状だ――。
「――って、え?なんで?僕らだけで動いちゃダメなの?」
テントの中に集まりそんな話しをしていたら、ロンがスコーンを食べながら、キョトンとした表情でそう言った。
あまりに気軽に言うので、クリス達はもしやロケットの呪いがまだ残って混乱しているのかと思ったくらいだ。
「ロン、貴方正気なの?ろくな杖を持っていないハリーに、どうやって『例のあの人』を倒せって言うの?」
「僕はそんなこと言ってない、どうして僕らだけじゃ駄目なんだって言いたいんだ」
「その口ぶりからすると、何か案でもあるのか?」
「『例のあの人』の日記は、確かバジリスクの牙で倒したんだよね?って言うことは、僕らが先行してホグワーツに忍び込めば、戦闘が始まる前にバジリスクの牙でロケットもカップも破壊できるんじゃないかって言いたいんだ」
「それだわ!!ロン、貴方の閃きってなんて素晴らしいの!!?」
ハーマイオニーは感激のあまりロンに抱き着くと、早々に荷物をまとめ始めてしまった。一方、あまりの急展開にハリーはもちろん、クリスもドラコも頭が着いて行かなかった。
だが確かに、ロンの閃きは素晴らしかった。成功すれば、奴の裏をかける。クリスは自分の手を見るとわずかに震えているのに気づいた。
これが武者震いというやつなのだろうか。ほくそ笑みながらクリスは震える手をギュッと握った。
「それじゃあまずノクターン横丁にあるボージン・アンド・バークスへ行って、どうにかしてキャビネットの中に入らないといけないのか」
「そうね。それも出来るだけ騒ぎを起こさずに、ね」
「ちょ、ちょっと待って!本気で4人だけで行くつもり!?」
「そうだけれど?」