第20章 【ロンの閃きとキャビネット】
「承知しましたぞ、マクゴナガル先生。それともし良ければ、私は生徒たちをホグワーツ特急に乗せたら、護衛としてそのままロンドン駅まで同乗しようと思っているのだが、如何かね?」
「ええ、その言葉を待っておりました。先生にはどうか生徒の安全のために動いて頂きたいと思っておりましたので」
マクゴナガルは、そう言いながらスラグホーンがエサに食いついたのを感じた。
どうせスラグホーンのことだ、実際に戦闘が始まったら、上手いこと言ってどさくさに紛れてホグワーツから脱出するに決まっている。
ならば少しでも良いから役に立たせようと、わざとこの話しを提案したのだった。
あとは護衛兼監督役として、スプラウト先生にも同乗してもらおう。あの方は穏やかで気配りが上手いから、不安におびえる生徒の為にもなろう。
「ではマクゴナガル先生、これで用事は終わりですかな?」
「いいえ、それともう1つ。先生に急いで『生ける屍の水薬』を作って頂きたいのです」
「どうしてそれを?」
「生徒たちをホグワーツから無事に逃がすために、今日の昼食時を狙ってスネイプとカロ―兄妹の食事に混ぜます。そうすれば、ホグワーツ脱出がもっと簡単になるでしょう」
「カロ―兄妹はともかく、ス、スネイプ相手に?そんなに上手く行くとは思えんが……」
「1番の懸念はそこです。ですからこの計画は絶対に口外しないよう、また態度に出さぬようお願い致します」
それでは、と最後に言うと、マクゴナガルはスラグホーンの部屋を後にした。
他にも話をしなければならない先生や、決めなければならないことが山のように残っている。こんな時、嫌でも眉間にしわが寄り、校長室に飾られたダンブルドアの肖像画が頭をよぎった。だが――
「後は任せなさい、ポッター。彼方がたの邪魔はこのミネルバ・マクゴナガルが許しません!」
だが奇しくも“これ”は生きている人間の領分だ。
小さく、だが凛とした声でそう一人呟くと、マクゴナガルは再び廊下を闊歩するのであった。