
第20章 【ロンの閃きとキャビネット】

早朝、マクゴナガルはホグワーツに戻ると、ツカツカと速足で廊下を歩きながら、これからの事を考えた。
生徒の殆どを避難させるとなると、やはりホグワーツ特急が1番手っ取り早い。だが城内からホグズミード駅まで、大勢の生徒をどう移動させるか……。
マクゴナガルは考えながら、フリットウィックの部屋の戸を叩いた。
「フリットウィック先生、いらっしゃいますか?フリットウィック先生?」
「もちろんです、お待ちしておりましたとも!」
すると中からキーキーと甲高い返事が聞こえ、フリットウィックが扉を開けた。マクゴナガルが戻ってくるのを今か今かと待ちわびていたのだろう。興奮からか、甲高い声がいつも以上に高くなっていた。
「騎士団での会談はどうでしたかな?」
「そのことで、今すぐ先生方に集まって頂きたい話があります。一先ず私の執務室に集まって頂けますか?」
「もちろんですとも!ではスプラウト先生やフーチ先生にも声をかけておきます」
「ご協力、感謝いたします。では、くれぐれもスネイプに見つからないように」
「承知しております」
そう言うと、マクゴナガルは今度はスラグホーンの部屋を訪ねた。
恐らく現時点で一番毒にも薬にもならない存在だろう。ならば……と、マクゴナガルは一計を案じた。
「スラグホーン先生、こんな時間に失礼いたします。相談したいことがあるのですが、宜しいでしょうか?」
「マクゴナガル先生、まだ陽が明けたばかりですよ?一体何の用が……」
「率直に申し上げますと、『例のあの人』が早くて今日か明日、最低でも明後日にはこのホグワーツに攻撃を仕掛けてきます」
それを聞いたスラグホーンは開いた口がふさがらずポカンとしていた。その間抜け面に、マクゴナガルはこう提案した。
「そこで先生には、是非とも生徒たちを避難させるための先陣を切って頂きたいのです」
「せ、先陣を切る!?この私が!!?」
「ええ、先生ほどのお力があれば、誰よりも、生徒たちを無事ホグワーツ特急まで導いてくれると信じております」
マクゴナガルの言葉に、スラグホーンは自慢の髭を撫でつけながら考えた。教師として生徒を誘導するのは当然の責務かもしれない。だが、死んだら元も子もない。
これまで築き上げてきた、著名人との人脈も何もかもだ。――とすると、考えられる一番安全な道はこれだとスラグホーンは思いついた。
