第19章 【1日目】
クリスはまたしてもテントの中でロンが眠っているという事をすっかり忘れて大声で叫んだ。
確かにヴォルデモートには幼い時から収集癖があったらしいが、その隠し場所がホグワーツだなんてにわかには信じられなかった。
それだけでなく、ハリーは更に驚くべき情報を口にした。
「それだけじゃない。ヤツはこれを機にホグワーツを占拠する気でいる」
「ホグワーツの占拠だって?」
「本当かポッター!?何故そんなことがお前にわかるんだ!?」
いつから耳をそばだてていたのだろう、突然ドラコはハリーに食って掛かった。
ハリーはドラコの剣幕に少したじろぎながらも、実際に自分の身に起こる特異な症状を説明した。
「僕は時々、ヴォルデモートと記憶や感情を共有することがあるんだ。だから分かるんだ、あいつが何を考えているのかを」
「へえ?それじゃあまた“罠”にかかった可能性もあるってわけだ?」
ドラコの言う“罠”とは、きっと5年生の時に皆で魔法省に侵入した時の事を言っているのだろう。確かにあれはハリーの過信が故の失敗だったから、今回も罠である可能性が無いわけではない。それでも、ハリーは意思を変えなかった。
「あいつは“生きる”と言うことに執着しすぎている。だからこそ、あいつは間違いなくホグワーツにやって来る。最後の分霊箱の無事を確かめるために」
ハリーが真っすぐな目でそう言い切ると、ドラコは何かを感じたのか、腕を組んで目をつむると、そのまま黙ってしまった。その一方で、クリスは集めた分霊箱を指折り数えてみた。
「ん?最後って言ったけど、まだ分霊箱は3つ残ってるんじゃないのか?」
「正しくはあと2つよ。1つ目は大蛇のナギニよ。ほら、バチルダ・バグショットに化けて私たちを殺そうとした大蛇。2つ目は恐らくレイブンクローに所縁のある何かよ」
「それでも、あと1つ足りないぞ」
「残りはこれだよ」
そう言うと、ハリーは首から下げた巾着袋から、ダンブルドアの遺贈品として貰った、羽根の折れたスニッチを取り出した。焚火の明かりを受けてチラチラと赤く輝いている。
「それって触っても何も起きなかった、例の遺贈品のスニッチだろう?」
「そう、でも1つ忘れてたんだ。僕がこのスニッチをどうやって手に入れたか覚えてる?」
「ポッター、もったいぶらずに早く言え」