第18章 【闇が晴れる時】
「……それで、どこで拾ったんだ?」
「僕ん家の『隠れ穴』からほど近い場所に、ふもとの街に続く小川があるんだけど……そこに水草と一緒に浮いてたから拾ったんだ。ザ・クィブラーの広告を見て間違いなく君の杖だって分かったんだけど、その時はもうロケットの虜になっていたから、返す気が起きなくて……」
「それでも、捨てずに持っていてくれたんだろう?」
「うん、何度か捨てようとも思ったんだけど、なんでか捨てられなくってさ……」
ロンはバツが悪そうにそう言ったが、クリスにしてみれば、完全に諦めていた杖が戻ってきたのだ。あまりの嬉しさにその場でダンスでも踊りたくなってきた。
「それで、私の杖はどこにあるんだ?」
「ローブのポケットに入ってるよ、はいコレ」
ワクワクしながらロンから杖を受け取った。――が、杖を手にした時のしっくりくるあの感じ、懐かしいような暖かな心地が全くしない。
だが外見は完全にクリスの持っていた杖そのものだ。この不可思議な事態に、クリスは眉根を寄せた。
「おかしいな、杖から魔力が感じられない」
「本当?でもそれ、間違いなく君の杖だよね?」
「それは間違いないが……ルーモス、光よ」
クリスが呪文を唱えると、杖先がほんのり光った。かと思ったら、またすぐにスゥッと消えてしまった。
まさかまた魔力が衰えてしまったのだろうか。
過去のトラウマが頭をもたげる中、クリスは緊迫しつつ、試しに今使っている祖父の杖で、同じように「ルーモス」と唱えた。
するとちゃんと明るい光が杖の先に灯ったので、クリスは大きくため息を吐いた。
「どうしてだろう……?」
「僕にも貸して」
試しにハリーも簡単な呪文を唱えてみたが、ほんの一瞬杖の先端が光ったと思ったら、直ぐに消えてしまった。
「どうしよう、オリバンダーさんに相談した方が良いのかな?」
「丁度良いよ、僕もオリバンダーさんに相談したかったんだ。いつまでもピーター・ペディグリューの杖なんて持ってたくなくってさ」
「ダメで元々、って思って行ってみる?」
「そうだな、よし!それじゃあテントに戻ってこの話しを2人にも伝えよう」
そう決めると、3人は静かに寝ているシリウスを起こさないようにゆっくりと忍び足で部屋を出た。
その途端、クリスは大切なことに気づいた。