第17章 【最後に勝つのは】
傑作だよ、マルフォイ一家がどれだけマグル生まれを虐げてきたか知らないわけじゃないだろう?と言いながら、ロンは大声で笑った。
……駄目だ、ロンは完璧にロケットの魔力に魅入られている。こうなったら力づくで目を覚まさせるしかない。
クリスはドラコがベラトリックスにしたように、悟られぬようゆっくりローブから杖を取り出すと、ほんの一瞬の内に呪文をかけた。
「ステューピファイ!!」
「――!!?」
クリスの魔法に一歩遅れて、ロンが反射的に同じ呪文を放った。すると赤い閃光がぶつかり合い、空中に四散した。
「そ、相殺された!?」
「惜しい、惜しい、もうちょっとだったのにね」
そう言うなり、ロンはクリスに杖を向けて「腕を縛れ、ブラキアビント」と唱えた。するとクリスの腕を後ろ手に縛った。と同時に、召喚の杖がカランと地に伏し、すかさずロンがそれを掴むと、楽しそうにしげしげと眺めた。
「君の召喚術は厄介だからね、暫くそうしててくれるかな?――あれ?この杖ってこんなとこにヒビが入ってたっけ?」
「止めてくれロン!その杖を返してくれ!!」
「ロン、そのロケットを外すんだ!そうすればきっと正気に戻れる!!」
あのロケットが全ての原因だというのは誰にでもわかることだった。ハリーは道を間違えた友を救おうと必死にロンに声をかけたが、ロンの耳には曲解された言葉にしか聞こえなかったようだった。
「正気?正気に戻ってどうするって言うんだい?まさかまた君とハーマイオニーが仲良くしているのを爪を噛んで耐えてろって言うのかい?」
「誤解よロン、ハリーと私はそんな仲じゃないわ!」
「黙れよ尻軽女、クラムと仲が良いのかと思ったら、今度はハリー、その次は僕。それで?それで今度は誰にケツを振っているんだい?」
まさかマルフォイかな?と良いながら、ロンは再び声高らかに笑った。
その様子を見たドラコが、先ほどの衝撃で立ち上がれぬ体でありつつも、ホグワーツに居た時のように薄ら笑いをしながら馬鹿にした態度でロンを嘲った。