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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第17章 【最後に勝つのは】


 そこは重く暗く、月明りだけが頼りのどこかじっとりとした空気と薄気味悪さが混同し、クリスは酷い不快感を覚えた。
 ここでセドリックと父様を失ったのだと思うと、クリスはやるせなさと共に強い哀愁の念が生まれた。

「ロン、どこだ!?ローンッ!!

 ハリーが杖灯りで辺りを照らしながら、大きく声を張り上げた。これは憶測だが、ロンはハリーをおびき寄せるための人質として捕らえられた可能性が高い。
 だから殺されることはないだろうが、その身に危険が迫っているのも確かだ。

 クリスはこの墓地で更なるトラウマを増やさんが為に、ハリーと同じ様に必死にロンの名前を叫んだ。だが、いくら呼んでも返答はない。
 まさか、もう?――という嫌な妄想とトラウマが頭の中を駆け巡り、クリスは吐き気と眩暈がしてきた。そんな時だった。

「……ハ、ハリー?」

 墓石の蔭からロンの弱々しい声が聞こえた。ハリーが急いで振り返ると、そこには墓石に半分体を隠して怯えるロンの姿があった。
 良かった、どこに敵が潜んでいるかは分からないが、取り合えずシリウスの様に大きなけがは無さそうだった。

「良かった、ロン!無事だったんだね!!」
「――ッ、ポッター!!」

 一瞬、ほんの一瞬ハリーがロンの声に答えた隙に、ドラコがハリーの体を突き飛ばした。すると同時にドラコの体が吹き飛ばされ、背後にあった墓石に強く体を打ちつけた。
 さらに持っていた杖がポーンと飛んで、ロンの手中に収まった。

「チッ、なーんだ。上手くいくと思ったのに。やっぱり無言呪文は苦手だなぁ」
「ロ、ロン……?君は何を言ってるの?」
「何って、君をいたぶって殺そうと思ったのさ。でもまさかマルフォイが助けるなんてなあ」

 思わぬ誤算だったよ、とロンはにべもなく言った。
 その顔には狂気や怨恨などはなく、むしろ平然としていた。
 唯一つ、目の下のクマは墨を塗ったように黒々としており、瞳にはいつもの少年の様な光がなかった。

「ロン……?どうして?」
「あぁハーマイオニー、生きてたんだね。『人さらい』にでも攫われていたら僕の溜飲も下がったのに」
「ロン、お前……さてはロケットの瘴気にあてられたな」
「そういう君の正気はどこに行ったんだい、クリス?まさか本当にマルフォイを仲間にするだなんて」
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