第16章 【立ち込める暗雲】
わざわざ遺贈品を残してくれたダンブルドアには悪いが、自分達がやり遂げようとしているのは素晴らしい冒険譚ではなく、親友の救出と両親の敵討ちだ。
そうと決めたら、4人はひたすらシリウスの帰りを待った。しかしいつも帰ってくる時間を過ぎても、シリウスは帰ってこなかった。
もちろん任務によっては帰ってくる時間もまちまちだから、そんなに心配することはないんだが……。その日はなんだかよく分からないが、胸がそわそわする様な落ち着かない感じがした。
そんな時だった、誰かが玄関口の前で『姿現し』をした気配がした。
嫌な予感がしたクリスはサッと席を立つと、敵か味方か分からないのに戸を開けた。すると――血まみれ姿のシリウスが、ドサッと玄関に倒れた。
「シリウス!?大丈夫かシリウス!!?」
「ハーマイオニー、急いでハナハッカのエキスを取ってきて!!」
「分かったわ!」
「ポッター、僕と一緒にこいつをベッドまで運ぶぞ」
ハリーとドラコが苦労してベッドまで運ぶと、マントとローブを脱がせてどこを怪我しているのかを調べた。
ローブの下は無数の傷でずたずたに切り裂かれ、大量の出血にハリーとクリス、ドラコの3人は「うっ」と言葉を詰まらせた。
丁度そこにハーマイオニーがハナハッカのエキスを持ってきたので、それを上半身の傷に垂らした。
すると傷口が癒され、徐々に血が止まっていくと、シリウスがうっすらと目を開いた。
「クリス、ドラコ……それにそこに、居るのは……ハリーか?それと、ハーマイオニー?」
「良かった、気がついたんだね!」
「どうして……2人が、ここに?……まあ良い、4人とも、よく聞いてくれ」