第16章 【立ち込める暗雲】
どこかで聞いた事がある様な、ない様な単語にクリスが首をかしげると、ドラコが呆れ口調でフォローを入れてくれた。
「古い純血一族であるペベレル家の3兄弟が、それぞれニワトコの杖、蘇りの石、透明マントを『死』から手に入れたっていうおとぎ話だろう?」
「あぁ~そう言われれば、そんなおとぎ話しがあったな。それで、その秘宝がどうしたんだ?」
「僕の持ってる透明マント、それがペベレル家に伝わる本物の透明マントだったんだ。そして2つめが、ダンブルドアが使用していた、ニワトコの杖だ」
「まさか、ダンブルドアがニワトコの杖の所有者だったのか!?」
ペベレル家の物語に登場するニワトコの杖は常に強き者に、勝者に従うとされている。つまり今の所有者は――……。
「ニワトコの杖はその昔、グリンデルバルドの杖だったんだ。だけどダンブルドアが打ち倒し、杖の持ち主がダンブルドアに変わったんだ」
「それじゃあ、そのダンブルドアを殺したスネイプがっ!?」
「そう、今のニワトコの杖の真の持ち主だ」
衝撃の新事実に、クリスとドラコは言葉を失ってしまった。
ヴォルデモートはこの事実を知っているのだろうか?知っているとしたら、スネイプをどうするのだろう。優秀な右腕として手元に置いておくのか、もしくは杖の所有権を得るために――?
そこまで想像すると、クリスは背筋がゾクッ……とした。
いいや、奴なら――ヴォルデモートならきっと殺るだろう。なにせ他人の命に全く興味がない奴だ。その内スネイプを殺し、本物のニワトコの杖の所有者になり替わるだろう。
そうなる前に分霊箱を破壊し、ヴォルデモートを仕留めなければ、世界は混沌の闇に堕ちる。
だがその前に1つ、どうしてもやらなければならないことがある。それは――
「ロンを探そう、分霊箱の呪いで、今頃大変なことになっているかもしれない」
「探すって、どうやって?居場所の検討すらつかないのに?」
「シリウスとルーピン先生の力を借りよう。土台、私達だけで全てを解決しようとしたこと自体が間違いだったんだ」