第16章 【立ち込める暗雲】
いやいやいや、普通に考えれば闇の陣営から離反し、自分について来てくれた時点で「そういう関係」なのだと公表しているのも同然だ。それなのにさっきからバカみたいに顔を赤くしている方がどうかしている。それに今大切なのは、情報の共有とこれまでの経緯だ。
クリスは軽く頭をふると、気持ちを切り替え説明を始めた。
まずは生家だったサンクチュアリの屋敷にある秘密の部屋に行き、新しい杖を手に入れたこと。
それから食料と情報を得るために『W・W・W』を訪ねたら、その地下が不死鳥の騎士団のアジトになっていることを伝えた。
さらにそこから、その場に居合わせたルーピン先生のご厚意で、この家を拠点として使って良いと言ってもらえたこと。
また、元々ここを根城にしていたシリウスと、3人で共同生活を送っていたことも説明した。
「ここでシリウスと3人で同居生活!?」
「言葉にすると大げさに聞こえるが、言うほど衝突したりしてないぞ」
「それはきっと貴女がいるからでしょうね」
クリスを怒らせたくないんでしょ、とハーマイオニーが我知り顔でドラコに話しを振ると、ドラコはふいっと顔をそむけて黙った。
「否定がないのが何よりの証拠」とばかりに、ハーマイオニーとならんでハリーもそう受け取ると、2人は顔を見合わせて笑った。
それから今度は、ハリーとハーマイオニー達の話しに切り替わった。
「君たちと別れた後、いろいろな場所に行ったんだ。中でも一番の成果は、ゴドリックの谷に行った事だと思う」
「ゴドリックの谷!?私もシリウスと一緒に行ったぞ!!」
「本当!?私たちそこで死の秘宝の紋章を目にしたり、『例のあの人』の蛇と戦ったりしたわ」
「あの蛇と戦った!!?」
なんとシリウスの言う通り、本当に『例のあの人』がらみの事件だったなんて。やはり勘の良さと言うか、未熟な自分と違って着眼点が良い。
それから2人の話しを聞くと、どうやらバチルダ・バグショットという老婆の体を乗っ取った蛇が、ハリーを自宅の2階に誘い込み、いきなり襲い掛かってきてハリーを拘束したらしい。