第16章 【立ち込める暗雲】
「仲間かどうかは別だな。僕は闇の陣営から離反はしたが、誰かに忠誠を誓ったわけじゃない。ただクリスを護るために一緒に行動しているだけだ」
「それじゃあ――」
「ハリー、心配しなくても大丈夫だ。私が居る限り、ドラコは寝返ったりしないよ」
ハリーはどうしてドラコが一緒にいるのか、その理由は十分理解しつつも、やはり入学当初からいがみ合ってきた仲だけあって、どうしても一家言あるらしい。
そんなハリーに向かって、クリスはニコリと微笑みかけた。さらにハーマイオニーからも「肩に力が入りすぎているわ」と言われると、ハリーは緊張の糸が切れたみたいに、深い息を吐きつつ、ドッと疲れた様子でテーブルに伏せった。
「えーっと、それじゃあ先ほどの続きとして、お互い離れ離れになっていた間のことを話しましょう」
仕切り直し、とばかりにハーマイオニーが若干明るめの声で皆に語り掛けた。それならばと、まず初めにクリスが口を開いた。
「2人とも知ってのとおり、ロンを追いかけたは良いが、私が肩を掴んだ瞬間ロンが『姿くらまし』をしようとしていて、また体がばらけてしまうのが怖くてロンから手を離したんだ。でも中途半端に『姿くらまし』をした所為で、ラブグッド家の近くの川に落っこちてしまって……」
それからクリスは、川に流され杖をなくしてしまったこと、その間ラブグッド氏に大変お世話になったことを伝えた。
だがウィンター・ホリデーで帰って来たルーナを利用し、『人さらい』が自分を捕まえに来て、やむなくマルフォイ家の邸宅に連れて行かれたことを話した。
「それで?それからどうしたの?」
「それからベラトリックスに拷問にかけられてたけれど、ナルシッサおば様が助けてくれて、それで……」
「それで?」
「それからドラコが……ベラトリックスを失神させると、私と一緒に屋敷から脱出してくれて……」
そう説明しながらクリスはその時の状況を思い出し、自分の顔がじわじわ熱くなるのを感じた。