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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第16章 【立ち込める暗雲】


「少しブランデーを入れたから、体が温まるだろう?」
「ああ、凄く美味しいよ。ありがとう」

 ドラコ自ら紅茶を入れてくれる日が来るなんて、正直思っても見なかった。と言うか、淹れ方を知っていたことに驚いた。
 これまでのドラコだったら、絶対にこんなことはしなかっただろう。でも今は恋人として、こんな風に優しくしてくれる。
 クリスはそれが嬉しいような少しくすぐったいような気分になり、思わず笑みがこぼれた。

 折角なので、クリスは入れてもらった紅茶の味を思う存分堪能した。それから召喚の杖に目をやり、召喚石に入ったヒビをつーっと指でなぞった。

「やっぱり、2体同時召喚なんてしたのがいけなかったのかな?」
「もしくは僕がスピードを上げさせ過ぎたのかもしれない……」
「相手は自然界を統べる精霊だ、そんなヤワなわけがない」

 確かにこれまで無いほど無茶で荒っぽい操縦だったが、約1000年もの間ほぼ無傷で受け継がれてきた、伝説の杖なのだ。
 それを受け継いだ身でありながら傷をつけるだなんて……。クリスは意気消沈を通り越して、また自分の殻に閉じこもりかけていた。その時――

「あの、2人とも良いかしら?」

 着替え終えたハーマイオニーが、おずおずと話しかけてきた。その後ろには同じく着替え終え、少し緊張した顔のハリーもいる。

「2人とも怪我はどうだ?」
「大丈夫よ、ハナハッカのエキスで治したから」
「それなら良かった。じゃあ2人も座ってくれ」

 4人がそれぞれテーブルにつくと、物が積みあがっている先生のリビングは余計手狭に感じられた。これでシリウスが帰ってきたらどうなるのだろうと、思わずにはいられなかった。

「えーっと、まず何から話し始めようか?」
「やっぱり、この数カ月の間、お互いに何があったのかを話し合いましょう」
「いや、それよりもマルフォイ。君がここにいるってことは、僕らの仲間になったってことで良いんだね?」

 ハリーの声は緊張気味だったが、同時に有無を言わさぬ真剣さに満ちていた。
 やはり、というかそう来るだろうとドラコも勘づいていたようだ。ドラコは決して感情的にならず淡々と事実のみを語った。
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