第2章 【嵐轟く結婚式】
「じゃあ、僕が触ったら……」
「無論、このスニッチに何かしらの変化や仕掛けが働く可能性がある」
「…………」
「どうしたポッター?何か思い当たることがあるのか?」
「いいえ……」
敵ではないが味方でもないスクリムジョールの目の前で、もし分霊箱に関する情報や、こちらにとって不利になる証拠が出てきたら……。
ハリーはゆっくりと、だが疑問を持たれないよう慎重なスピードでスニッチに触れた。だが何も起こらず、放たれたスニッチは相変わらずジグザグとあたりを飛び回った。
「……期待外れか」
スクリムジョールがそう小さくボヤくと、リビングがシーンと水を打ったように静かになった。
スクリムジョールはもう一度深く、大きくため息をついてソファーに深く沈み込むと、少し間をおいてからグイッと立ち上がった。
「これで名実ともにダンブルドアの遺贈品は君たちの物だ。行くぞフランシス、回らなければならない所はここだけではない」
そう言ってスクリムジョールと副官は『姿くらまし』でその場から去ると、辛くも嵐をやりすごした4人は大きくふうっとため息をついた。
クリスはスクリムジョールの目の下の隈を思い出し、小さくため息を吐いた。
だが、ここでのんびりしている暇はなかった。わざわざこのクソ忙しい日にやって来るなんて、迷惑以外の何物でもない。
知ってか知らずかは置いといて、その所為でこちらも急ピッチで準備をする羽目になった。
また、ハリーとクリスとシリウスは良くも悪くも有名すぎて、折角の結婚式に騒動を招きかねないので、ポリジュース薬を使って変身することになっていた。
変身するのはロンたちの住む『隠れ穴』の丘のふもとに、最近引っ越してきた一家だ。
夫が魔法使いで、妻は普通のマグル。そしてまだ10歳未満の女の子がいる、どこにでもいるような普通の家族だ。しかし……