第15章 【Dragon Sky】
「……悠久の空をかける緑の君よ」
「クリス!?まさか君この場で――?!」
「うるさい、ちょっと黙っててくれ」
普通の状態で召喚するのも難しいというのに、こんな空中での召喚に不安がない訳がなかった。
だけど今のクリスに考えられる方法はこれしかなかった。
「古より伝わりし血の盟約において汝に命ず、出でよ、シルフ!!」
クリスが詠唱を唱えたその途端、クリスとドラコは緑色の光に包まれた。そしてなんとか頑張って瞼を開けてみると――そこには薄い緑色の髪に銀の鎧をまとい、銀の槍を持った風の精霊のシルフが、クリス達に並走するように空を飛んでいた。
「頼むシルフ!追い風を起こして箒のスピードを上げてくれ!」
シルフはこくりと頷くと、兜を目深にかぶり銀のやりを高々と掲げた。
すると暴風と呼んでも差し支えないほどの追い風が発生し、クリスは先ほど以上にドラコの背中にきつくしがみ付いた。
「良いぞ!クリス、絶対に手を離すなよ!!」
「言われなくてもそのつもりだ!!」
シルフの力を借りて、なんとかドラゴンの飛ぶ速度と並ぶことが出来た。クリスはもう目を開けることすら出来ず、ギュッと目をつぶり、全てをドラコとシルフに任せることにした。
その一方、命の一端を担わされたドラコは、これまでクィディッチ選手として研鑽してきた技術を駆使しながら、シルフの起こす風を上手く利用し、どうにかドラゴンに乗っているハリーに近づくことに成功した。
「おい!ポッター、今すぐドラゴンから降りろ!!」
「マ、マルフォイ!?それにクリス!!?」
「互いに言いたいことは沢山あるだろうが、とにかくソイツから降りろ!!」
状況が状況なだけに、お互いドラマティックな再会のシーンとは縁遠いものとなった。だがハリーはドラコの後ろにしがみ付いているクリスを見て、ある程度のことは把握できた。その上で、ハリーはドラコに対して文句を言った。