第15章 【Dragon Sky】
「ただもう1つ、悪いニュースもある」
「と言うと?」
「ドビーっていう屋敷しもべ妖精がいただろ?アイツがハリーをかばって亡くなったらしい……」
「ドビー……が?」
ドビーは生前マルフォイ家に仕えていた事もあり、クリスとは幼少期からの知り合いだった。
尚且つどの屋敷しもべ妖精よりもハリー・ポッターを敬愛していたから、ホグワーツに入学する前は密かにハリー・ポッターの雑誌を手に熱く語りあったこともあった。
そのドビーが亡くなった。それはクリスにとってただ悲しい知らせというだけではなかった。自分の中の、あの楽しい時間を共にした仲間が消えた。それは胃の中に重い石が落っこちたような、何とも言えない暗い気持ちにさせられた。
チャンドラーに続き、ドビーまでもが……と、クリスが想いにふけっていると、急にカタカタと商品を陳列していた棚が揺れだした。
フレッドが悪戯したのかと思ったが違う。なんと店全体が、いや、地面自体が揺れていたのだ。
イングランドでは滅多に地震なんておこらない。だから未知の恐怖に恐れおののいたクリスは、カウンターに必死にしがみつきながら、心の中で必死にドラコの名前を叫んだ。
徐々に揺れが収まってくると、店内にドラコの必至そうな声が奔った。
「――クリス、無事かい!?」
この時ほど、ドラコの声を聞いて安心したことはなかった。騒然とする店内の中で、ドラコがショーケースから落ちた商品を踏みつけながらクリスのもとにやってきた。
「ドラコ!?良かった、お前も平気だったんだな!」
「そんなことはどうでも良い、ポッターを見つけたぞ!!ドラゴンの背に乗っていた!!」
「ド、ドラゴンの背?一体何を言っているんだ!?」
こんな町中にドラゴンなんて居るはずがない。そんなこと5歳児でも分かる事なのに、さらドラゴンの背中にハリーが乗っていただなんて……。
クリスは先ほどの地震の恐怖で、ドラコの頭がイカレてしまったんだと思った。
だがドラコの必死な表情は、とても気が動転しているとは思えない。それどころか、傍から見るとポカンと口を開けている自分の方がマヌケに見えた。