第14章 【ゴドリックの谷】
「その根拠はどこから?」
「まず一つは、掲載記事があまりにも小さかったからだ。バチルダ・バグショットと言えば20世紀を代表する偉大な歴史家だったのにもかかわらずだ。それと、もし我々が『死喰い人』だとしたら、ハリーがこの町を訪れることを予想して、当然罠を仕掛ける」
そのセリフを聞いて、クリスは祖父の肖像画が似たような事を言っていたのを思い出した。
もし自分がハリーだったら、この町を訪れてみたいと思うだろう。そしてその心理を利用し、『死喰い人』たちもそれ相応の罠を仕掛けてくるに違いない。
そんなところに今回バチルダの事件が起こった。だとすると、これをヴォルデモートと結びつけるのは極々簡単な推理だった。
「ここだ、ここがバチルダの家だ」
着いた先はマグル除けがされており、一般人は誰も興味を示さないような古ぼけた唯の空き家にしか見えなかった。だが柵から一歩足を踏み入れると、2階の半分が吹き飛ばされ、庭はがれきの山になった廃墟が姿を現した。
「ほら、マグル除けはされていても、警官の1人も立っていないし、調査した跡もない」
「それじゃあ、この惨状はハリーと『例のあの人』がやりあった名残りだと?」
「そうかもしれないが、私の感では恐らく『例の奴』本人ではなく『死喰い人』の可能性の方が高い。何故なら奴は滅多に前線には出てこないからな」
「でも『闇の印』を使えば、何処に居ても奴が直ぐに駆けつけるんだろう?ならハリーとやりあった可能性も十分ある」
「確かにそうだ、だからここに来たんだが……そう言えばここ最近、君の『闇の印』が熱くなった事はあったかい?」
「いや、5年生になる直前にダンブルドアから銀の腕輪をもらって以来、全く反応はないけど……」
そこまで言って、クリスは「あっ!」と声を上げた。
もしかしてダンブルドアが、必要もない銀磨きセットを遺贈品としてくれたのは、この為かも知れない。
きっとダンブルドアの事を思い出しながら手入れをすることで、互いの心が――いや、ダンブルドア風に言うと『絆』が芽ばえ、その分腕輪の加護が高まるのかもしれない。いや、絶対にそうだ。
となると、やはり皆への遺贈品にも、何か絶対に意味がある筈だ。そう考えたら、クリスは居ても立ってもいられなくなってきた。