第13章 【恥と猛省】
それからクリスはシリウスの作ってくれた朝食をゆっくり食べ終えると、外で魔法の練習をしているドラコの所に向かった。
「おーいドラコ、調子はどうだ?」
「あぁ、クリスか……悪くはないが、実践の想定が出来ないから少し不満ってところだな」
「それじゃあ丁度良い、私が相手になってやる」
「へえ?手加減はした方が良いのかい?」
「そっちこそ、負けた時の言い訳は考えたのか?」
そう言ってクリスが祖父の杖を手に取ると、杖が待ってましたと言わんばかりに熱を発し始めた。
召喚の杖から感じる、全身を覆う一体感とは明らかに違う。例えるならば、そう、早く呪文をぶっぱなして相手をねじ伏せたい、そんな気分だ。
「準備は良いかい?」
「あぁ。3、2、1――GO!」
言うが早いか、クリスは速攻で失神魔法を仕掛けた。ドラコはそれを盾の呪文ではじくとクリスの体を逆さ吊りにした。
一瞬うろたえたクリスだったが、咄嗟にドラコに「レダクト!」と唱え、自身に「フィニートインカンターテム!」と唱えた。すると当然のこと、クリスは逆さ吊りの状態からろくな受け身もとれず、ずぼっと雪の上に転がった。
「……クソ、この逆さ吊りの魔法は着地が厄介だな。」
「雪が積もっていて良かったな、地面じゃこうはいかないぞ」
そう言いながらドラコは、雪に埋まったクリスの手を引いてくれた。こんな風に見せるドラコの小さな優しさに、クリスは胸がキュッとなった。
思えば小さい頃から何をするにも、いつもドラコ一緒だった。遊ぶ時も勉強する時もいつもこんな風に……。それらの淡い記憶を思い出し、クリスが耐え切れずにクスッと笑うと、ドラコも同じように笑った。
「どうする?まだ続けるかい?」
「当然、勝ち逃げなんてさせるわけがない!」
それから暫く、クリスとドラコは実践を想定しつつ魔法の打ち合いをした。その最中、クリスは幾度となく杖が持つ威力に振り回されそうになり、必死に気を引き締めていた。そうでもしなければ、ドラコに大怪我をさせてしまう恐れがあったからだ。
これは絶対にあの好戦的な祖父の杖だからだろう。何故ならクリスの意思とは関係なく、杖自体が興奮したように猛っているのを感じるからだ。