第13章 【恥と猛省】
翌朝、良い匂いにつられてクリスが目を覚ますと、隣のベッドで寝ていたはずのドラコの姿がなかった。当然ドラコが料理なんてするはずがないので、キッチンにいるのはシリウスだろう。
クリスはパジャマ代わりにお借りしたルーピン先生のローブを脱ぐと、簡単に身支度をしてからキッチンに顔を出した。
「お早うシリウス」
「やあ、お早うクリス。すぐ朝食ができるから座って待っててくれ」
「いや、朝は紅茶だけでいい」
「それは良くない、君はまだ成長期なんだぞ?」
そう言いつつシリウスがさっと杖を振ると、テーブルの上に熱々のスクランブルエッグとソーセージが運ばれてきた。
それを見ただけでお腹がいっぱいになりそうなところに、焼きたてのトーストも目の前に並べられ、最後にミルクたっぷりの紅茶が湯気を立てて注がれた。
観念したクリスはまず紅茶を口に含み、まろやかな甘さに舌鼓をうってからシリウスに問いかけた。
「なあシリウス、ドラコはどうしたんだ?」
まさか自分を置いて逃げ出したりはしないと信じているが、目を覚ましてすぐにドラコの姿が見えないのも正直落ち着かない。
クリスが素直に訊ねると、シリウスは苦笑しつつ親指でクイッと窓の外を指しながら言った。
「あいつなら庭で魔法の練習をしているよ。私と一緒に居るとうんざりするそうだ」
「そういうシリウスはどうなんだ?昨日は一緒に居るのも不快だと言ってたじゃないか」
「もちろん不快だが、君の前で喧嘩はしないことにしたんだ」
君が困るだけだからね、とシリウスは微笑みながら付け加えた。
昨日、初っ端からドアを蹴破って入って来た人間のセリフとは思えないが、要らぬ喧嘩が減るのだから良いことだと、クリスは自分に言い聞かせた。