第12章 【共同生活のすゝめ】
思わぬルーピン先生の口から発された言葉に、3人の声が綺麗に重なった。その様子をみて、ルーピン先生は相変らずニコニコ笑いながら説明を始めた。
「前にも話したけれど、約1年ほど前から、この家はほとんどシリウスが使っているんだ。僕は任務もあるし、それにトンクスの実家に御厄介になっているから丁度良いってね」
そう言えばそうだった。去年のクリスマスに先生のお家にお邪魔した時も、なんかそんなような事を言っていた気がする。
しかしだからと言って、他に適切な場所はなかったのだろうか。ドラコとシリウスと3人暮らしだなんて、不協和音しか生まれない気がする。
「ふざけるな!こんな男が居る所でまともに暮らせるか!」
「おや、ドラコ。それじゃあここ以外に行く当てはあるのかい?」
「そ、それは……」
「シリウスも、ここなら君の可愛いクリスの様子がすぐ分かる。君にとっても都合が良くないかい?」
「それはそうだが……」
言葉巧みに操られ葛藤する2人をさておき、ルーピン先生はクリスの耳元でこう囁いた。
「クリスはどうだい?ここなら結界もしっかり施してあるから、『例のあの人』からドラコを守ることが出来る。それにシリウスと一緒に暮らしていれば、騎士団の情報も手に入る」
確かにこれまでの旅の苦労と、効率性を考えると、ここは拠点にうってつけの場所だ。それにここならまともな食事にもありつけるだろう。
クリスは悩みながら、ルーピン先生に幾つかの質問をした。
「……ここの結界はどれほど頑丈ですか?」
「私とシリウス、そしてキングズリーが何重にも施したんだ。例え『例のあの人』であっても簡単に姿現し出来ないはずだ」
「食料はどうすれは……?」
「シリウスが調達するよ。今までもそうしてきたんだしね」
「……あの2人が、喧嘩したらどうすれば?」
「それは君次第だね。でもどうか恐れず、彼らの背中を押してあげてくれないかな?」
と言われても、どう背中を押せばいいんだろう?一生懸命考えても、水と油の2人を納得させられるだけの話術なんて、あいにく持ち合わせていない。
クリスは悩みに悩みぬいた結果、少しこっぱずかしいが手っ取り早くて一番簡単な方法を取ることにした。