第2章 【嵐轟く結婚式】
魔法省のトップ相手に萎縮したロンがヘマを起こす前に、ハーマイオニーが横から突っ込んできた。
「何を言っているの?貴方がお兄さん達の『W・W・W』の実験台にされて困っていた時、ダンブルドア先生がいつも助けてくれたじゃない、そうでしょう!?」
まるでその場をそっと見ていたのかのようなハーマイオニーの台詞に、ハリーもクリスも舌を巻いた。
嘘は女のアクセサリーという言葉を聞いたことはあるが、今日のハーマイオニーは、口を開く度に一層きらびやかに光り輝いた。
スクリムジョールは何とかロンの弱点を付こうと手を変え品を変え訴えてきたが、それらは全てハーマイオニーの秀でた“アクセサリー”に迎撃された。
頭が良いのはわかっていたが、ロンをフォローをしながら魔法省のトップ相手に怯むことなく立ち向かう彼女に、クリスは改めてハーマイオニーの知性と度胸の大きさを知った。
だが、いくらなんでもスクリムジョールとしては、17歳の小娘に出し抜かれたくはないだろう。副官に耳打ちすると、今度はハーマイオニーへの遺贈品として、とても古く、表紙がかすれたボロボロ本を差し出した。
「ダンブルドアは君にこの本を託したんだ。この本を寄贈した理由は分かるかい?ミス・グレンジャー」
ハーマイオニーはその遺贈品を震える指で受けとると、それを大事そうにギュッと抱きしめ、分厚いハードカバーに顔を埋めた。
「校長先生は、私が読書が好きだと……特にこれが好きだったのをよくご存じでした。きっとそれでこれを、私に……」
「読書が好きだと言うわりには、その本は些か子供っぽすぎる気がするが?」
そう、差し出されたものは、古すぎて擦り切れた箇所が目立つ、子供向けの本だった。いくらハーマイオニーが読書家と言えど、これを愛読書と言うには説得力が足りない。
なんでも良い、理由がどうあれ、遺贈品としての価値を見出さなきゃいけない。何か良い案はないだろうか。
こんなに擦り切れた古本に付与する価値……擦り切れた古本……その時、クリスがタイトルを見てハッとした。
「ん?それって吟遊詩人ビードルの本だよな?」
「本当だ!懐かしいなあ、ぺちゃくちゃうさちゃんとか、ママによく読んでもらってたよ!」