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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第2章 【嵐轟く結婚式】


 ついに迎えたダブル結婚式当日の早朝。新郎新婦は元より、もてなす側も大騒ぎだった。
 パーティ会場は庭に広げた巨大なテントで開催され、めかしこんだウエイター役が走り回るようにしてドリンクの用意に奔走する。

 そんな嵐が飛び交う様な支度中に、ある事件が勃発した。なんと総理大臣のルーファス・スクリムジョールが突然訪ねてきたのだ。もちろん祝宴客ではなく、“嵐の前の静けさ”として、だが。

 リビングに通されたスクリムジョールはソファーに腰を落とし、傍らにいた副官が「今日はダンブルドアの遺贈品を届けに来ました」と単調に言った。
 一瞬パーシーかと思ったが、似たような眼鏡をかけた別人だった。そして即座にハーマイオニーが挙手をした。

「何かね、ミス・グレンジャー?」
「ダンブルドア校長先生の遺品なら、何故身内や学校側ではなく、魔法省からなのですか?」
「答えは簡単だ、ダンブルドアは非常に優れた魔法使いだった。それこそその功績は魔法省のみならず歴史に名を遺すほどに。そのダンブルドアの遺贈品に、魔法省が介入して何が可笑しいのかね?」
「しかし、魔法省が遺贈品を差し押さえる前に、第3者から“闇の魔法”であるかどうかの審議があります。まさかダンブルドア校長が、闇の魔術に精通していたと仰るのですか?」
「君はずいぶん法律を勉強しているようだ、卒業後は是非魔法省に来ると良い」

 流石は魔法大臣、ハーマイオニーの質問に対しても臆することなく答えた。いや、もしくはこう来るであろうと最初から予想していたに違いない。
 スクリムジョールは副官に小さく耳打ちすると、副官はスクリムジョールの手のひらに銀の小さな小箱をさし出し、ロンに差し出した。

「これはダンブルドアから君への遺贈品だ。『火消ライター』と言って、ダンブルドアが開発したらしいが、君は知っていたかい?」
「えっ?いえ、知りませんでした……」
「その存在も、名前すらもかね?」
「はい……」
「そうか、つまり君はダンブルドアは、それほどまで親しい間柄ではなかったのかと?」
「えっと、僕はその……あんまり」

 この分かり切ったなんとも小癪な問答に、クリスは小さく舌打ちした。だがこれはダンブルドアの遺贈品の贈呈の場だ。いつもの様に軽くあしらってして追い返すわけにはいかない。
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