第3章 聖女の力
今日は朝から事件多すぎ…。
照くんの場合、寝ているところに自分から手を握っているだけなのでまだ心に余裕はある。
救助と思えば緊張もまだましだと思う。
「……」
ただ、それを無言で見守る8人の視線が痛い……。
せめて密集してるんだから雑談でもしていて欲しい。
せっかくなので、照くんの顔を見つめてみる。
真っ直ぐな眉に平行に並んでいる閉じた瞳。余分な肉のない整った顔は小麦色で陶器のように綺麗だ。美形って罪だな…
数分経ち、周りから会話が聞こえ始めた頃、うっすらと照くんの瞳が開き、こちらを向いた。
何かを訴えるように口が動いたけれど、何を言っているか聞こえない。
私は無意識に身体を少し近づけた。
「ッ!」
突然。
照くんに繋いだ手を引き寄せられた。
何が起きたか、わからなかった。
見つめていた美形が突如ドアップになったのだから。
驚いて繋がれていない手でベッドを押し、離れようとするが、首の後ろに手を回され、がっちり首元をホールドされてしまった。
え?何っ!?ちっか……っ!
私の思考が追い付かないうちに顔はさらに引き寄せられ、唇が重なってしまった。
「なん…っ……!!!???……―――ーッ」
ナニゴト????!!!!
照くんの理解できない行動に驚き、喋ろうとした。
それこそが私の失敗だったのだ。
ヌルリとした温かい感触が唇に触れ、動いたかと思うと口の中に侵入してきたのだから。
何事っ!!何事っ!!!何事なのおおおっっっ!!!
私はすでに朝からの出来事で脳ミソと心臓を使いすぎてしまっていたらしい。キャパオーバーどころか思考回路がまったく回らない。
あれ???
空気ってどうやって吸うんだっけ???
私は呼吸の仕方を忘れ、意識を飛ばしてしまった。