第2章 聖女の力
聖女ってのは、あれ?
婚約者が悪役令嬢で王子様を略奪してザマァされたり、途中から能力がなくなって発狂したり、世界が平和になったら用済みでポイ捨て去れたりする聖女?
グルグルと今まで読んだ異世界モノのストーリーが頭に駆け巡る。
異世界モノって、正直増え過ぎてワンパターン化しないためか、最近のはろくなオチがない。ザマァされる側だ。
大体さ。異世界飛ばされて新しい人生始めるからって、婚約者がいるイケメン王子様を略奪してハッピーエンドって性格悪くない?
でもまぁそもそも、この世界は王子様はいるのかな…。
「聖女って呼ばれると急に現実味薄れるよね~?」
「っ!」
ハッと顔を上げると目の前に佐久間くんが座っており、机に肘をつきながらニコニコと笑みを見せ、話しかけてきた。
あれこれ考えていたら、異世界の人たちは部屋から退出しており、私とSnow Manのみんなだけが残っている。
「葵ちゃん?」
「はっはい!葵です!
ありがとうございます!」
「ありがとうとか、オレなんもやってないし」
佐久間くんはケラケラと笑った。
「オッサン達は事後処理があるとかで出てったよ。しばらくしたらここに夕食も運ばせるってさ」
「夕食?」
「そ。オレら時間的には写真撮影でまだ午前中だったんだけど、葵ちゃんも?」
「はい。洗濯物干してて……」
「外で見た感じだと、確かに太陽が落ちてきてたしね」
阿部ちゃんが呟く。
私はお城に圧倒されて、空は見ていなかった。
「どうなの?太陽って日本と同じ?」
「いや、じっくり見る時間もなかったし、夜空も見てみるけどね」
「ふ~ん。まぁそこらへんは阿部ちゃんに任すけどさ。とりあえず今できることやってみるか!」
ガタッ!と佐久間くんは突然椅子から立ち上がる。
「ステータスオープンッ!!」
時間を見るように腕を前に出し、佐久間くんは叫んだ。
……なるほど。