第7章 物吉貞宗と日向政宗
物吉side
今日でこの本丸とも主様ともお別れ。
この本丸は本当に小さくて江戸時代の頃のちょっと立派な日本家屋、くらいの大きさの本丸です。
ここの主様はとても優しくて暖かくてどこか懐かしい感じがしました。
主様から顕現されてすぐに審神者部屋で聞いた、
加州様と小夜くんの事件のこと。
そして主様自身に審神者としての力、霊力が元々少なかったのが
この最近は特に年々少なくなっているらしいです。
本丸内にあった畑も縮小したと聞きました。
それらを含めて主様はあと一振り、短刀なら顕現させることが
出来るはずだとおっしゃって日向正宗くんを鍛刀しました。
ボクはほんの少しですが日向が来てくれた事で
ある由縁を思い出しました。
徳川家康公です!
あの方の元にボクは元々いて、日向も紀州藩徳川家に伝わった刀です。
何かの縁ではないのでしょうか……。
主様に頼まれて日向と共に加州様の復活を試みましたが
加州様は泣きながらご自分を責めてばかりでボクたちの声は届いていないようです。
主様にも、「ありがとう、もういいですよ」と言われてしまいました。
その後主様の余生が残り僅かだということを聞きました。
ボクはこの本丸と主が好きでした。
だからとてもショックでしたが、主のいない本丸に居続けたら
ボクたちは刀の姿に戻り、最悪刀解の可能性もあると聞いて怖くなりました。
そうしたら主様が、里親本丸というところがあることを教えてくださいました。
その本丸の話を聞くと、審神者様はとても優しい方なのだろうと思いました。
でなければ、里親本丸の審神者なんて危険な仕事を引き受けるわけがありませんから…。
それから加州様には押し入れ越しに挨拶をし、里親本丸の審神者様が来るのを待ちました。
その里親本丸の担当の政府さんも一緒に待っていてくれて
もうすぐこちらに着くと教えてくれました!
どうか、優しい方でありますようにと願いながらボクは
里親本丸の審神者様を待ちました。