第5章 動き出した本丸と初期刀の初日
『よし!鶴さん、終わったよ!』
最後に櫛で髪を梳いてあげて声をかけた。
「お、ありがとな!」
『どういたしまして♪
これで鶴さんの髪も乾いたし、夕餉食べようか!』
「あぁ!主は何を作ってくれたんだ?」
『それは見てからのお楽しみ♪』
鶴さんは思った以上に適応力が高いのか、順応性がいいのか
今日ここに来たばかりなのに私にたくさん話しかけてくれるし
あちこち本丸内をキョロキョロしながら楽しそうな表情も見せてくれる。
これも演技で、寝静まってからブスリ、なんて事にならないだろうかと心配になるくらいだ。
でも私との契約時にきちんとした理由も無しに、主として契約をした私に刀を向けても刺す事は出来ない。
契約違反としてストッパーが働くはずだ。
鶴さんのこの笑顔を疑いたくはないが、数日は確実に用心するに越した事はない。
でもほんとに心からの笑顔ならAランクであったものの、
初期刀として、初のお迎えの刀としては上々だ。
泣いている姿まで見たせいか、余計に心からそうであって欲しいと願いつつ、鶴さんと話しながらまた厨に戻りご飯を温め直した。
その間鶴さんは、パタパタと厨内を動き回る私を
厨の真ん中にある作業台の入り口側に置かれたイスに座って
何が出来るのかをワクワクした目で見ていた。
もしかしたら今日一番の輝いている目かもしれない笑
『よし!鶴さん!!』
「ん?なんだ?」
『とっておきの驚きを見せてやろう!』
私はフフンとドヤ顔をしながら、鶴さんのモノマネ風に言った。
「主が驚きを見せてくれるのか?」
『そう!いい?見ててね?』
私はそう言うと鶴さんの前に楕円形に盛り付けたケチャップライスを置いて
溶き卵の入ったボウルを用意して、フライパンに油を入れて火を付けた。
「主?何をするんだ?」
『鶴さん、こっち来て見てて?』
「…?わかった。」
鶴さんが隣に来たのを確認してフライパンの温度を確認して
私は一気に溶き卵を流し入れて、これまた楕円形のプルプルした半熟の卵を作りケチャップライスの上に置いた。
『鶴さん、行くよ?』
私は包丁を持って卵の真ん中に包丁を入れて卵を切った。
するとトロっとした卵が割れて半熟卵がお目見えだ。