第5章 動き出した本丸と初期刀の初日
『うん!その金色の筋はね、金繋ぎって言ってね、割れた湯呑みを修復するのに使われる日本の伝統技法なの!』
「割れた湯呑みを修復…」
『日本人はさ、昔から物を大事にしてるでしょ?
それが物を大切にする心から、今では日本のアート作品として価値が高くなってるんだよ♪
同じ割れ方は絶対にしないし世界に唯一無二のものが出来るのも素敵だと思わない?』
「…確かに、綺麗だし元々こういう絵付けをされてるのかと思ったぜ」
『さっき鶴さんにここでは新しい物で揃えてあげたいって話したじゃない?』
「あぁ、言ってたな」
『これはね、金繋ぎの職人さんが丁寧に作ってくれたものなの』
「ん?それなら主はわざわざ割れた湯呑みを探したのかい?」
『えへへ、私が元いた現代のお家で割れちゃった湯呑みを職人さんに頼んだの』
「じゃぁ、主が使ってたものなのか?」
『元々はね!』
『鶴さん、私ね、両親がいないんだ…』
「そうなのか…?」
『うん、両親の話は鶴さんが聞きたければ今度にでも話すよ!
でね、両親の代わりに祖父母が私の親代わりで、私の祖父母はこういう和の食器とか日本の伝統文化の物とかが大好きでね!』
『この湯呑みも有田焼きって言う焼き方で作られた湯呑みなんだけど、私が片手で数えれるくらいしか使ってないのに
手が滑って落としちゃったものなの』
『この湯呑みは祖父母と旅行に行った先で焼き物屋さんに寄った時に私が一目惚れして、祖父母が買ってくれたものだったから
落として割れた当時はすごくショックでね』
「そんな大事にしてたものをわざわざ金繋ぎを頼んで、俺に用意してくれたのか…?」
『うん!ほんとは新品の綺麗なものにしようと思ってたんだけど、この割れた湯呑みの事を思い出してね?
この湯呑みが割れたすぐ後に祖母が亡くなって、祖母の後を追うように祖父も亡くなったから
私にとってはバタバタしてて、湯呑みの存在を忘れてしまってたの。
それに割れちゃってたし、この湯呑みを見たら祖父母の事を思い出して泣いちゃいそうで…』
「……そうか」