第3章 私の初期刀
『ここにいる全ての刀剣男士様方、長きの間
辛く苦しい毎日をよく頑張ってくださいました。
これからはここでの全ての苦しく嫌な思い出は忘れ、
楽しかった思い出だけを持ち
政府本部へ魂とご自身をお持ちください。
次に相見える審神者様、主様はきっと素敵な方々です。
貴方様方を大切にしてくださるでしょう。』
本当は声に出さずとも、心の中で思うだけでいいのだか
何をするのか彼にも見ていて欲しかった。
これは私の勝手な自己満足にしか過ぎないけれど…
私が言い終えると同時に本丸に散らばっていた刀剣たちは
刀の姿の者も、人の身をかろうじて維持していた者も
本来の刀の姿へと戻り、私の前に集まって来た。
そして空気を浄化した時と同じ様に白い光に包まれ、
ボロボロになっていた姿は磨かれ
打ち直されたかの如く、綺麗な姿へと変わり私の前に並んだ。
「っ!?君、一体何をしたんだ…っ?」
『皆様の嫌な記憶を消し元の姿へと戻しました。
ここで起きた嫌な記憶、怖い記憶、すべて浄化し、
この後新たな人の姿の器を作られても
心から次の審神者を受け入れられるように、
疑うことなく幸せな日々を遅れるように、
少々まじないをかけました』
ニコッと微笑む私を見た鶴丸国永は呆然としながらも何処か安堵しているようにも見えた。
これが私の審神者としての力の強さの1つでもある。
本丸内に残っている刀剣男士達の刀の姿を元に戻すこと。
ただしそれが出来るのは折れていたとしても
刀、本体がある場合のみに限られる。
もしかしたらこの本丸には他にも刀があったのかもしれない。
でも刀解されていたら、私の力は使えない。
そしてその代償というのか、楽しかった思い出を持っていく刀達の記憶には
刀解された刀との記憶は無かったことにされる。
それがどんなに、楽しかった記憶でもだ。
本体がある刀たちとの楽しかった記憶のみが
彼らには残るのだ。
でもこれはまだ彼には、鶴丸国永には言えない。
彼だけはここで起きた全ての事を知っていて覚えているから…
彼がここであったことを受け入れ心の傷が癒えてからでなければ
辛過ぎて私には到底話せないことだ。