第10章 エピローグ
トオルと最後の夜を過ごしてから季節は移ろい4月になっていた。
4月某吉日、トオルは長野の彼女と結婚した。
トオルと最後に会った日に、私はこう言われていた。
「美都、もう結婚式まで2か月だから、LINEとかはしないから…」
「ええ、分かったわ…」
「俺のLINEとか全部消してくれないか?」
「ええ、分かったわ…」
そんな会話をしたと思う。
とても切なかったのを覚えている。
私は、トオルに言われたようにLINEを削除した。
でも、電話番号は消すことが出来なかったのだ。
私は、トオルとは違う人の名前で電話帳に彼の番号を残した。
期間限定で、決して本気になってはいけないと思っていたのに、気づけばどこか本気になっていた様に思う。
14歳も年の離れた男に本気で惚れてしまった自分に気づく。
それも7か月と言う短い期間だった。
今回の、トオルとの件も夫の誠一は気づいていたに違いない。
でも、今回も誠一は一切トオルに関して触れて来なかった。
誠一は私の事を愛しているのだろうか。
それとも、離婚などしたら自分の経歴にキズが付くと思い、私と離婚しないのだろか。
確かに、誠一のエリート意識は半端なく高かった。
国立大学を現役で入学し、現役で卒業しているからだろうか。