第5章 北鎌倉
私は、急いで自宅に戻った。
部屋に入ると、夫の誠一はソファで横になっていた。
「あぁ、み、美都…」
誠一は弱々しくそう言ってきた。
男と言うものはどうして、病気になった時、こんなにも弱々しくなってしまうのだろう。
女は病気をしても、前向きに生きてゆく様な気がする。
「誠一さん、今戻ったわ…大丈夫?」
「美都、ごめんな…エリちゃんと飲んでた時に、あんな電話して…」
このことを言われると私はちょっと困ってしまう。
本当はトオルと一緒にいたのだ。
「それよりも、熱は?」
「まだ、8度はあるかな?」
「ご飯は食べたの?」
「まだだよ…何も食べる気がしなくて…」
「じゃ、お粥を作るから待っててね…」
「うん、それよりエリちゃん怒ってなかったか?」
「大丈夫よ、今日の穴埋めに今度鎌倉に一緒に行くことになったから…」
「そ、そうか。なら良かった…」
私は、お粥を作ると誠一に食べさせた。
そして、風邪薬を飲ませたのだ。
その風邪薬のせいだろうか。
誠一は安心した様にベッドで眠ってしまった。