第4章 居酒屋
私の身体は濡れてゆきトオルを求めていた。
私も、トオルの身体を抱き締めたのだ。
だが、夫が熱を出して家で待っているのだ。
それを、思うととても複雑な気持ちになった。
私は、トオルの身体から離れた。
「美都、また、連絡するね…」
「ええ、待ってるわ…」
「今度は、鎌倉に行こうよ…」
「え?鎌倉?」
私は、意外なことを言われてちょっと驚いてしまった。
次回は鎌倉に行こうと、トオルは言ってきたのだ。
「鎌倉に美都と二人きりでデートがしたいんだ…」
「ええ、分かったわ…連絡してね…」
そう言い残すと私は個室の引き戸を開けて靴を履いた。
その姿を見るとトオルはこう言ってくる。
「じゃ、俺も帰るよ…」
「そう?」
「うん、美都がいないなら意味ないし…」
「ごめんね…」
「支払いは俺がしておくから…」
「ありがとうね…」
そう言うと私は足早に店を出て行った。
外に出ると、週末だとあって、大勢の人で駅はいっぱいだった。
私は誠一が待つ自宅へと急いで帰って行った。