第4章 居酒屋
トオルは自分の父親の話しを始めたのだ。
「俺の父親ってさ、最低なんだ…」
そう言うとビールを一口飲んだ。
「どう、最低なの?」
「うん、俺がまだ小学3年生の頃だったと思う。その時の話しさ…」
トオルは生ビールのグラスをジッと見つめている。
何かを思い出している様だった。
「小学3年生の時、夜、寝ていたら親父と母さんが言い争ってる声がしたんだ…」
「それで、どうしたの?」
「俺は、その言い争う声で目が覚めて、2階の階段から下に降りようとしたんだ…」
「うん、それで?」
トオルは尚も生ビールのグラスを見つめていた。
「その時だった。親父が母さんを殴ったんだ…」
「え?本当に?」
「うん、本当さ…」
そう言うとトオルは少し黙ってしまった。
トオルの父親はDVだったのだろうかと、私は思っていた。
「それで、どうなったの?」
「うん、それで親父は家を出て行った…」
「お母さんとトオルくんを残して出て行ったの?」