第3章 誘い
良く考えてみたら、とても虫のいい付き合い方だと思う。
独身女性を誘うよりも、既婚女性の方が後腐れなく付き合えるだろう。
独身女性が相手ならば、揉め事も多くなる。
だが、既婚女性となら、そんなに揉め事もないだろうし、夫がいるのだ。
別れて、自分と一緒になってくれ。
などと、言われることもないだろう。
期間限定で付き合い、その期間が終われば既婚女性ならば夫の元へ帰れば良いのだ。
期間限定とはよく考えたものだと、私は心の中で少し思っていた。
それでも、私はトオルの事が好きだったのでこう返した。
「ええ、構わないわ…期間限定にしましょう…」
「ありがとう、美都…」
私は、この当時、本当にトオルの事が好きだった。
自分の年齢も考えず、14歳も歳の離れた男を好きになっていた。
その気持ちに嘘はなかったし、純粋にトオルのことが好きだったのだ。
夫の誠一にこんなことを知られたらどうなるだろう。
そんなことはその当時、考えてもいなかった。
14歳年下の若い男の肉体に溺れてゆく自分を想像してみる。
それだけで、身体が濡れてゆく様に感じたのだ。
これから、トオルとの期間限定の付き合いが始まるのだった。