第3章 誘い
だが、トオルにこう話したのだ。
「私も、トオルくんに会いたいけど、結婚してて、夫がいるわ…」
「その、旦那さんとは、上手く行ってないんでしょう?」
誠一とセックスレスであることはすでにトオルには話してあった。
確かに、誠一とはセックスレスでもう2年近くセックスをしていなかった。
ヤマザキがいてくれた時は、彼とのセックスで心も身体も満たされていた。
しかし、もうヤマザキはいないのだ。
「そうよ、上手く行ってないわ…」
「なら、俺と付き合ってよ…」
私は、その言葉を聞くと驚いてしまった。
トオルには彼女がいるではないか。
その彼女を裏切るのかと思ったのだ。
「でも、トオルくんには長野に彼女がいるでしょう?」
「それとは、違うんだ…」
「何が違うの?彼女を裏切るつもり?」
「そうじゃない…」
トオルはちょっと困っている様だった。
私には、意味が分からなかった。
「何が違うの?」
「俺さ…」
「なに?」
「彼女以外の女性を知らずに、このまま結婚するのがイヤなんだよ…」
確かにそうなのだ。