第5章 忘れ物
「お、おそ松くんが、私のスカートめくったりなんかするから…!」
「別に減るもんじゃないんだし、良くない?」
「よくないよ!…あ、ちょっと!」
なに性懲りも無く、またスカートをめくろうとしてるんだ、この人は!
ここには一松くんもいるのに…!
めくられる前に、慌ててスカートを両手で抑えようとした、その時。
「え…!?」
「ぐは…っ!!」
目の前にいたおそ松くんが、隣にいた一松くんに思い切りぶん殴られていた。
一松くんに殴られた勢いで、地面に倒れたまま起き上がってこないおそ松くん。
ま、まさか気絶した?大丈夫?
なんて思いつつも、今のはおそ松くんが100%悪いので、私は倒れているおそ松くんのことを、無視することにした。
おそ松くん、ちゃんとそこで反省するんだよ…。
「…春奈ちゃん、ごめん」
「え…な、なにが…?」
「うちの長男が、小学生みたいなことしちゃって…もうこんなこと絶対にさせないから、許して欲しい…」
「そ、そんな、許すもなにも、一松くんが謝る必要なんてないのに…」
どう考えても、悪いのはスカートめくりしてきたおそ松くんなんだから…。
一松くんは、むしろ私のことを助けてくれた優しい男の子なのに。
そんな申し訳なさそうな顔しないで、一松くん!
一松くんは何も悪くないよ!
「…俺たち同じ顔だから、春奈ちゃんが兄さんのこと嫌いになっちゃったら、俺のことも嫌になるかなって思って」
「ええ!?ならないよ!なるわけがないよ!」
「一松くんは一松くんなんだから!」と言って、落ち込んでいる一松くんのことを少しでも励まそうとしていると、背後からチョロ松くんの高い「うーん…」という声が聞こえてきた。
ま、まずい。チョロ松くんが起きてきちゃう。
ついさっき、下着を見られて鼻血を出されたばかりなので、今日は大人しく帰った方が良さそうだ。
私がここにいたら、またチョロ松くんが鼻血を出しちゃうかもしれないからね。
「あ…チョロ松くんが起きるみたいだから、私は帰るね、一松くん!今日はありがとう!」
「あ…あぁ、また明日…!」