第4章 双子
ーーー遅刻しなくて良かった。
カラ松くんはあれからずっと上の空だったけれど、なんとか学校まで連れてくることは出来たので、あとは私が一緒にいなくても何とかなるだろう。
女の状態で六つ子たちとは関わりたくないから、学校では極力避けていきたいんだけど、同じクラスに三人もいるからなぁ、松野兄弟…。
おそ松くんと十四松くんとトド松くん。
私の秘密を知っている十四松くんが、同じクラスにいてくれるのは助かるんだけど、この三人の中に例の松野くんがいたら、避けられないから困るんだよね…。
まぁ、おそ松くんは過去の態度からして、私のことは好きじゃなかったと思うから、警戒するべき相手は十四松くんとトド松くんだけなんだけど…。
私…『春奈と春馬』は双子だって伝えてあるから、二人が私の顔を見て絡んでくるかもしれないのが困りどころだ。
しかも、トド松くんは私の後ろの席!
顔は多分もう見られちゃってるから、あとは向こうから話し掛けてこないことを祈るしかないんだけど…。
大丈夫かな…。
…あ、担任の先生が教室に入ってきた。
「プリント配るから、後ろの人に回せよー」
プリントか〜…。
…いやちょっと待って、後ろの人に回せよって、私の後ろはトド松くんなんですけど…!!
なんで朝からそんなことを私にさせようとしてくるんですか、先生…!
六つ子とは顔を合わせたくないのに…。
でも、トド松くんのことは傷つけたくないから、ちゃんと振り向いて笑顔で渡そう。
プリントは仕方が無いからね。
「…どうぞ」
「…え……あ、ありがとうございます」
…トド松くん、今、「え」って言われなかった??
家にいるやつと同じ顔だ〜って思われたのかな。
それとも、私の笑顔が引き攣ってて変だったとか?だとしたら恥ずかしすぎるんだけど…。
ま、まぁ、何も言われなかったから、良しとしよう。
誰も話しかけてきませんように…。
平穏な学校生活が送れますように…!!