第1章 A
とは言え、〝共同〟と名の付く行為か苦手な俺は、寮と聞いただけで尻込みしてしまう。
「あ、あの、俺やっぱ…」
って、えっ…?
言いかけた俺の手が、またしても凄い力で引っ張られ…
「え、え、え、うわっ…!」
俺の意思は関係なく、開け放たれたドアの奥へと引き込まれた。
「えと…、あの…」
何が何だか…
こうなると、元々口下手な俺の口からは、言いたいこと一つも出て来やしなくて…
呆然と立ち尽くす俺を他所に、櫻井翔はピカピカの靴を脱ぎ、しっかり揃えてから玄関の脇に置いた。
で…
「ここでちょっと待ってろ」
そう言い残して、玄関から一番近いドアを開けた。
多分風呂場…なんだろうな、ピピッと操作音我した後、シャワーの流れる音がしたから。
「なあ、そこで脱いでくれる?」
「え、は、はい?」
まさかの一言に、自分でもビックリするくらい、声がひっくり返る。
いくら男同士って言ったって、今さっき会ったばっかの相手の前で、たよ?
しかも、玄関で…なんてさ、俺じゃなくたって驚くし…
「い、いや、だから…」
「ほら、とっととその薄汚れた靴と靴下脱げって…」
「え、え…?」
あ、なんだ、靴と靴下ね…
だったら最初っからそう言えよな!