第8章 変様
「美都は、旦那と離婚して、僕と一緒になる気はないの?」
「え?」
私は、この言葉を聞いてまたもや驚いてしまったのだ。
今まで一緒に居て、ヤマザキは1度もそんなことを言ってはこなかった。
私は、その言葉を聞くと何も言えなくなるのだった。
ヤマザキは私と結婚したがっている。
けれど、今のヤマザキは出会った頃のあの優しいヤマザキではなかった。
お金に執着し、自分自身を見失って金の亡者になっていた。
お金が人を幸せにすると思っているのだ。
私は、お金と言う現象はニュートラルで何も色が付いていない状態だと思っていた。
その、ニュートラルなゼロの状態に色をつけるのは私たち自身に他ならないと思っている。
お金があるから幸福で、お金がないから不幸なのかと言えば、それは違うと思った。
確かに、お金はあるに越したことはない。
だが、身の丈に合ったお金でないと人間は不幸になると思っていたのだ。
ヤマザキは変わってしまった。
あの、優しいヤマザキはどこに行ってしまったのだろう。
私は、この頃、ヤマザキと会うのがとても辛く感じるようになっていたのだ。
私の気持ちは徐々にではあるがヤマザキから遠ざかってゆくのだった。
季節は、寒さ厳しい冬を迎えようとしていた。