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シュガーヒル

第6章 ティファニー


ヤマザキとどこにランチに行ったのだろう。
私の記憶は実に曖昧だった。

7月だったのでとても暑さを感じ、蝉が沢山鳴いていたのを覚えている。
蝉があんなに沢山鳴いていたのだから銀座ではないだろう。

どこか、都内の樹木が生い茂っている場所だった様な気もする。
こんな話をしてくれたのを覚えている。

「ここの建物は昭和初期に建てられた当時はモダンな集合住宅だったんだよ…」

そう、ヤマザキから説明を受けた集合住宅はとてもレトロでモダンな雰囲気を醸し出していた。

「でも、この集合住宅ももう直ぐ取り壊されてしまうけどね…」

そう言うと、もの凄く悲しそうな顔をするのだ。
そのレトロでモダンな集合住宅の近くに素敵な洋食店があった。

確か、そこに二人で入った様な気がする。
その洋食店で何を食べたのか覚えていない。

多分、ハンバーグか何かを食べたのだろう。
そんな、気がするのだ。

私は、買って貰ったティファニーのネックレスが見たくて店で箱から出して眺めていた。

「そんなに気に入ってくれた?石が入ってた方が欲しかったんじゃない?」

ヤマザキは優しくそう言ってくれた。
でも、私はヤマザキにこれ以上、経済的な負担を掛けたくなかった。

「いえ、石の入っていない方が欲しかったからこれでいいわ…」

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