第5章 シュガーヒル
ヤマザキが誘ってきたのだ。
「美都、一緒に踊ろう…」
「でも、私、踊った事ないから分からない…」
「音楽のリズムに合わせて身体を揺らしていればいいんだ…」
「そう?こんな感じ?」
私は、音楽のリズムに合わせて身体を揺らした。
「そうだよ。その調子だ…」
身体を揺らして音楽のリズムに身をゆだねてみるととても気持ち良くて、気分が上がってくるのが分かってきた。
私は、この時自分が結婚していて人妻であることを完全に忘れていた。
誠一に対する罪悪感は全くなかった。
純粋に、クラブで踊ることにハマって行ったのだった。
911ではなかったのだけれど、名前はもう忘れてしまったが他の同じようなクラブで踊っていた時、イタリアの男性から一緒に踊らないかと、誘われたことがあった。
連れのヤマザキが一緒にいたのにも関わらず、そのイタリアの男性は私を誘ったのだった。
私は、そのイタリア人に手を引かれ、ホールの真ん中で一緒に踊ったのだ。
クルクルと身体を回されて、目が回るかと思ったところでヤマザキがストップをかけてくれた。
そこで、ヤマザキが私をイタリア人から引き離して助けてくれたのだ。
今、思い出すととても懐かしさが込み上げてくる。
そして、最後に行くクラブがシュガーヒルだった。
シュガーヒルは正に、私たちにとって甘い丘そのものだったのだ。